東京高等裁判所 昭和45年(ネ)3102号・昭46年(ネ)494号 判決
本件事故当日被控訴人は、運転手高橋をして被控訴人車を自己の営業の用に供していたものであるが、他方亡操らの被控訴人車への同乗についてみるに、運転手高橋は、亡操ら方に下宿していたという自己の全く個人的な関係に基づいて右同乗を承諾したものであって、被控訴人の営業の運営の一部あるいはその延長もしくはそれと密接な関係に基づくものではなく、しかも被控訴人の就業規則で私用同乗を禁止しているにもかゝわらず、被控訴人に無断で同乗させたものであり、従って被控訴人としては亡操らの同乗はもとより、一般的にその運行供用車に第三者が私用同乗することは、予測しえなかったものというべきである。
自賠法第三条に基く運行供用者の責任の存否は、運行支配と運行利益の帰属により判断せらるべきものであるが、その責任は、報償責任、危険責任の思想を基礎としているものであるから、自動車運行による事故及び被害の発生が運行供用者にとって一般的社会的に予測可能の範囲内のものでなければならず、本来予測されえない特別の事由によって生じた損害については報償責任、危険責任の原則ははたらかず、従って、運行供用者の責任は生じないものと考えるべきである。以上の論点にたてば、運転者が第三者の同乗を承諾し、右同乗が運行供用者にとって一般的社会的に予測しえないものである場合には、当該運転行為は本来の運行供用者のための運行であることは勿論であるが、それと同時に同乗者との関係においては同人のための運行であり、本来の運行供用者は、運行供用者の地位に立たず、同乗者は「他人」にあたらないものと考えるべきである。従って本来の運行供用者は、第三者に対しては賠償責任を負うが、同乗車に対しては運行供用者でないから賠償責任を負わないものと解すべきである。
(石田哲 小林定 関口)